Versusはトップダウンシューター『Nation Red』の続編だ。
トレイラーを見ても見た目以外の変化を感じないかもしれないが待って欲しい、続編の名にふさわしいものになっている。
# 前作Naton Red
Naton Redは2009年に発売された。まだインディゲーム自体の知名度が低い時代にだ。
ただただゾンビを打ち倒し、スキルを取得し自キャラを強化。指とスキルの限界を目指すある種の修行のようなゲームである。
マルチプレイのみという挑戦的なゲームだった。度重なるアップデートで改良が加えられ、不安定ながらもゲームに支障が無いプレイが可能になった。後にシングルモードが追加され実質的なチュートリアルとして扱われることになる。その後も現在に至るまで、バグ修正などのアップデートが不定期に加えられる息の長いゲームになっている。
ランキングを競い合うという、単純な動機によるハイレベルなプレイヤーによる上位争いは、起動毎に確認するのが楽しみになるものだった。
# 前作との違い
## カートゥーン風のレンダリング
前作の味でもあったのっぺりしたグラフィックが一新された。
モデリングやテクスチャも一新され、安っぽさが大きかった見た目が目に見えてリッチになっている。また、モーションにも手が入っているようだ。
気付きにくい点では画面の回転の対応がある。
前作からの引き継ぎマップの一部は標準だと90度角度が変わっている違和感や、視認しにくいオブジェクトを好みの角度に変更できるのは大きい。
## キャラクターのカスタマイズ
### 見た目のカスタマイズ
「できる」というだけで、マスクやプロテクターの有無が変更できる程度。画面をいっぱいに引いて遊ぶゲームであることを考えれば、この程度で十分だろう。色が変えられるなら、個性を強調できたかもしれないが。
### 初期能力値の調整
今作の大きなポイントのひとつと言っていいだろう。
職種ごとに「移動速度」「精度」「強さ」「回復力」のパラメータを自由に割り振り、自分のプレイ似合ったキャラクターを作り出せる。職種ごとに項目に対する必要ポイント数が違うことで変化を付けている。
### 初期武器の変更
Nation Redではどの職種だろうとも初期武器はグロック19とアック。しかし今回はある程度自由に変えられる。スタート時からショットガン装備も可能だ。序盤に使いやすい武器を拾うまで、ひたすらハンドガンをポチポチ売っていく作業が不要になったのはとても嬉しい。マルチプレイでの影響も大きく、武器の奪い合い、譲り合いが発生しにくくなった。
# 残弾管理が及ぼす影響
本作で注目すべきは弾薬管理だ。
Nation Redでは弾薬は無限だったが、本作では有限だ。敵がドロップする弾薬を意識して拾わないと、あっという間に弾切れになってしまう。
マルチプレイでは弾薬さらに影響が大きい。
弾薬のドロップはそれなりにあるが種類がある。「弾薬」「ショットガンシェル」「ガソリン」「釘」の4種。ランダムドロップとはいえ、同じ弾薬を使う武器を全員で装備していてはまったく足りない。それ故にプレイヤーが自主的に使用武器を分散させることにつながる。
これだけでは面倒なだけといえるが、この武器の分散は対ボスの詰み防止につながっている。本作ではボスごとにアンチ武器(攻撃)があるようなのだ。例えばショットガンなら有効なダメージを与えられるが、ライフルでは効果が薄いなど。
改悪に思える弾薬システムは、単調な繰り返しプレイに変換を与え、強制ではなく変化と協調性(役割分担)を自然に発生させる理由になっている、シンプルながら極めて有用なシステムといえるだろう。
なお、アップデートで弾薬システムの有無を選べるようになった。旧来のシステムを好むなら変えるのが良いだろう。
# 良い点ばかりではない
## 生かし切れていない拠点構築
サブタイトルでもある「Sandbox Diorama」。のこうたい文句はいまいちと言える。
バリケードやタレットの設置、予備弾薬の配置といったマップのカスタマイズ機能はスタート時に行えるだけ。壊れたバリケードの修理や追加は始まってしまったら一切できない。
作った配置はセーブ&ロードが可能なのは救いだ。
ゲーム開始後に構築した拠点に手を入れれない問題は根深く、せっかくの売りを、初回に面倒な構築をしてセーブ、その後はロードするだけの面白味がまったくないもになってしまっている。
今後のアップデートで、一定時間(wave)枚に拠点の再構築時間を設けるなどのテコ入れを期待したい。
## よくはなったがいつものマルチプレイヤー
前作比で安定したマルチだが、やはり同期に軽い問題が残る。
筆者がホストしプレイしたフレンド(国内)からは、「1秒ぐらいラグる」、「レベルアップでパークが取れない」などの指摘があった。環境依存の可能性もあるが記しておく。
## 謎な名称変更
Naton Red 2ではなく、新たなタイトルを付けたがために新作に気がつかないプレイヤーがいそうなのが残念ではある。
某トップダウン恐竜シューターのような、名称の迷走がおきないことを祈るばかりである。
# まとめ
まだまだ荒削りながら、前作Nation Redのポイントを踏襲し、新要素を追加した順当な続編といえるだろう。
フォーラムでの意見をくみ入れたアップデートも積極的に行われていて、将来性も十分。日本語が分かる開発者の方がいるようなので、もしかしたら日本語で意見を書いても通じるかもしれない。保証はしないが...
前作を遊び尽くしたプレイヤーはもちろん、旧作の古くさい見た目で敬遠していた新規プレイヤーにもおすすめできるようになった。発売段階から日本語対応なのも嬉しい。
長々と書いたが、Nation Red同様に指が壊れるまで脳死プレイしてしまうゲームなのは間違いない。見た目の印象でスルーしてしまうのはもったいないと言ってこう。